最近読んだ、考えさせられ気付きを戴いたコラムです。
人生の成功とは何だろうか。成功の法則や、勝利のきっかけを書くものは多い
けれど、そもそも一体勝利とは何なのだろうか、成功とは何なのだろうか。
世の中に生を受けて、気がつくと目の前でレースが繰り広げられている。遅れ
をとるな、負けるな、勝て。何が勝つ事で何が負ける事かもよくわからないま
ま、負けてはならないと走り出す。
世の中で選択を悩んでいる人は多い。辞めるべきか辞めないベきか。起業すべ
きか、就職すべきか。いろんな選択で人は悩むけれど、実は悩んでいるのは選
択ではないのではないかと僕は思う。
何が成功か。それが決まればどちらを選べばよりそこに近づけるかという戦略
が出てくる。でもその何が成功かがわかっている人は思ったよりも多くない。
もっといえば何が自分にとっての幸せかがわからず、とりあえず競争を戦って
いる人も多いだろう。
現役時代、そんな事を話したら“競技をやっている時にそんな弱気な事を言う
な、終わってから考えろ“と言われた事がある。でも、それは嘘だとある時わ
かった。競技が終わって就職しても同じ事を言われる“そんな事考える前に働け”
アスリートが最もパフォーマンスが高いときは、意味を感じ、前に進んでいる
という実感があり、そして自分は間違えていないと信じられるときだ。だから
調子が悪い時アスリートは何にでもはまる。信じないより何かを信じていた方
が強いから。
結果に満足感を依存するアスリートは燃え尽きる傾向にある。結果はどこまで
いってもきりがなく、そして高いレベルにいけばいくほど結果がでにくくなる
から。やってもやっても結果が出ない領域でどう自分を奮い立たせるか。
僕は長い競技人生で、段々と目標を達成する為に努力があるのではなく、努力
する為に目標を設定するのだと思うようになった。目的は目標の達成ではなく、
今この瞬間を精一杯生きる事。
父親が死んだ時、学んだ事が二つある。一つは人は必ず死ぬ。そしてもう一つ
は、それがいつなのか誰にもわからない。
人生は長いのかどうか、いつ終わるのかわからない中で、それでも自分にでき
る事は精一杯今を生きる事しかない。僕にとって成功とは、何かを達成しよう
と必死で生きる今であり、自分を思いっきり燃やしている今だった。
勝つ為の戦略や成功の為の法則はいろいろあると思うけれど、幸せは体感でし
かなく未来や過去ではなく、今この瞬間しか自分は感じる事ができない。自分
にとって成功、勝利とは何なのか。忙しい毎日の中少しだけそれを考える時間
を作ってもいいのではないかと思う。
為末 大