10月に入り、寒暖の差を感じつつもまだまだ暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?食欲の秋で、食べ物が美味しく感じられ、ついつい食べすぎてしまう今日この頃です。
私たちの身近にある喫茶店について、今回は書かせていただきます。ちなみに、弊社の近くにも珈琲専門店が最近2件ほど開店したと思ったら、古くからの喫茶店が売り店舗になっているという現実を目の当たりにしています。
喫茶店市場は、1982年をピークに右肩下がりの傾向にあります。ドトール、スターバックスの2強をはじめ、タリーズ、プロント、サンマルクカフェなどのカフェチェーン大手の店舗数は3,000を超え、もはや飽和状態です。特に都心部では、賃料や人件費が軒並み上昇傾向で好立地の物件争奪が激しさを増し、自社チェーン同士の食い合いが見られるほどの過熱ぶりです。
そこで、カフェ各社は、出店の舞台を郊外へと移行しはじめました。郊外型店舗によってローコスト運営を可能にし、より確実な採算が確保できるからです。ただ、都心部でのやり方をそのまま郊外店に持ち込んでも通用しません。利用者層や利用動機が異なるからです。
ターゲットは、ずばり団塊世代を中心としたシニア層に絞り、顧客の囲い込みを図ります。これまで街なかのカフェを利用していた彼らが定年で自宅にいる時間が長くなり、自ずと地元の店に行くことが多くなります。そこには、回転率を第一とするセルフ式のコーヒーチェーンとはひと味違う、ゆったりと居心地の良い空間で時間を過ごしたいという、シニア層の需要が存在します。
長時間滞在できる「店舗設計」と、コスト面やスタッフの手間の点で敬遠されていた「フルサービス」、そしてポストファミレスを視野に入れた「フードメニューの充実」が、『郊外型カフェ』の必須条件といえます。
喫茶店激戦区の名古屋で根強い支持を獲得し、今や全国区となったコメダ珈琲店は郊外型フルサービスカフェの代表的存在といえます。2003年には東京に進出。ログハウス調のゆったりとした造りで、店内には雑誌や新聞が多数用意されており、何時間いてもOKののんびりとした雰囲気が最大の売り。
ドトールコーヒーの郊外型店は、星乃珈琲店。2011年にスタートして以来、千葉、埼玉などに約55店舗で展開。高品質なハンドドリップコーヒーと窯焼きスフレパンケーキが人気。
スターバックスは、今春、都心から離れてインスパイアド・バイ・スターバックスをスタートさせました。同社が新型店を出すのは初めてのこと。コーヒー1杯450円と、通常店より2割高。主婦や中高年層の需要を狙ってメニューを増やし、アルコールの提供も初の試みです。
他に、サンマルクカフェが岡山で郊外型1号店をつくり、タリーズコーヒーもフルサービス郊外店を検討中。銀座ルノアールが展開するミヤマ珈琲は昨年12月、埼玉に郊外型1号店をオープンしました。イタリアン・トマトは、今春、郊外の商業施設内にフルサービスの新型店ITカフェを開業しています。
「速い、安い」から、価格が少々高くともゆったりとくつろげる近頃の「純喫茶風」カフェの人気。これも、昭和の古き良き時代への回帰需要の一つなのでしょうか。珈琲の品質(味、香り、サイドメニュー)+空間の品質(時間、心地、雰囲気)が今後のキーワードなのでしょうか?