枕草子と言うと、「平安時代、清少納言により執筆された随筆」という風に学校で覚えたかと思います。随筆と言ってもあまりピンと来ませんが、現代風に簡単に言うとエッセイ集です。枕草子は、エッセイとしては日本初の書物となります。平安貴族の暮らしぶりや、都の風情などが描かれていますが、それだけでなく礼儀作法やマナーについて、ピリッと辛口で書かれていたりします。当時の文化に対して、いわゆる「ダメ出し」をしているのです。
◆「にくきもの いそぐ事あるをりに来て、長事するまらうど。」という一節。――現代文に訳すと「憎らしいもの、それは急いでいるときにやってきて長話をするお客。」となります。平安の世も現代も、相手の都合を考えない長話は迷惑だということです。
◆「わが知る人にてある人の、はやう見し女のこと ほめ言ひ出でなどするも、ほど経たることなれど、なほにくし。」――ちょっと長いですが、簡単に言うと昔の彼女の話をする男は憎たらしいという意味です。やたらと昔の恋人を自慢したがる男というのはいつの時代にも存在するようです。
◆「わが使ふ者などの、『何とおはする』『のたまふ』など言ふ、いとにくし。ここもとに『侍(はべ)り』などいふ文字をあらせばやと、聞くこそおほかれ。」――召し使っている者なんかが、自分の行為なのに「~でおいでになる」「おっしゃる」などと言っているのを聞くと凄く頭にくる。ちゃんと「存じます」などの言葉を使わせたいものだ、と思うことが最近すっごく多い。要は部下の言葉使いに対して苦言を呈しています。「最近の若者は言葉使いがなっとらん!」のは平安時代から同じみたいです。
そんな厳しい清少納言ですが、「よろずの事よりも情あるこそ」という言葉も残しています。男も女も、何はともあれ優しい思いやりがあることが一番大事、という意味です。人間として大事なことは、どんなに時代が変わっても同じなんだなぁと、しみじみ思った次第であります。(N)
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