精密機器や割れ物などを梱包するときに使う気泡緩衝材=通称「プチプチ」。ストレス解消や気を紛らわしたりするときに、いわゆる「プチプチつぶし」を行う方も多いのでは?ところでなぜ人はプチプチを潰したくなるのでしょうか。
人がプチプチを潰してしまう心理を、心理学では「アフォーダンス」という言葉で説明するそうです。これは「物体の持つ形、色、材質などの属性が、物体自身をどのように取り扱ったらよいかメッセージを発している」という考え方です。例として、ある部屋の中に椅子とボールが1つ入っています。いまこの部屋の中に1人の人間が入ってきました。その人はどのような行動をとるでしょうか?アフォーダンスの考え方に従えば、「その人はボールを投げ、椅子に座る」が正解になります。これは、その人が過去にボールと椅子の使い方の経験をしており、部屋にある物体のアフォーダンスから物体の本質的な使い方が呼び覚まされた、という考え方です。もちろん「椅子を叩き、ボールを舐める」という行動を取ることも可能です。しかしボールと椅子がそれぞれ「投げる」と「座る」ということを強くアフォード(=自らの扱い方を主張)しているため、それが可能だからといって全ての動作可能性の中から適当に行動を選択するということは起こり得ないというわけです。
ここで再びプチプチに目を向けるとご理解いただけると思います。『柔らかくて安価なポリエチレンシート・触ると適度に押し返される弾力性・ポッコリ飛び出た無数の突起物。』まさに「思いっきりつぶしてくれ!」と強くアフォードしていることが判ります。
そんな風に本来の目的とはまったく違う存在意義の方が高いような気がするプチプチ。気泡緩衝材の最大手・川上産業では、プチプチつぶし専用プチプチを販売しています。1日1プチできる「プチプチカレンダー」や、何回つぶしてもなくならない「無限大プチプチ」も発売中。プチプチはああいう形だからつぶすのであり、つぶされるためにああいう形になったのではないハズなのですが。(N)
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