最新GPSを搭載した小さな漁船が、大型船から数百万ドルを巻き上げる―――これが現代版・海賊の姿です。インドの西、アラビア海・アデン湾を中心に活動するソマリアの海賊を指して「21世紀型海賊」と呼びます。この地域は古くから海賊が存在してきましたが、船の積み荷を強奪するという従来のイメージとは違い、今は乗組員を拘束して身代金を奪うのが目的。ただし、イスラム圏であるため、相手から攻撃が無い限り命は取らないといいます。
特徴は、ハイテク機器をフル活用していること。海賊が狙ったマグロ漁船が、実は象牙の密輸船だったことがあったそうです。彼らはGPS等を使って『どんな船なのか』を正確に把握して襲っているのです。身代金の受け渡しには、まず海域の場所を指定、そこに身代金を落とさせ、GPSレーダーを使って回収します。
海賊と言うと、物騒ですがどこかしらカッコいいイメージを抱きます。が、やっていることは立派な犯罪行為です。もちろん取り締まりが必要なのですが、実は海賊を無くすには「海」でなく「陸」からのアプローチが絶対条件。というのも、海賊がいるソマリアという国は内戦があった1991年以来、無政府状態。これを健全な国家にしない限り、根本的な解決にはなりません。またソマリアは世界で最も貧しい国の1つで、激しい飢饉にさらされています。無法地帯となった近海の魚を、他国に根こそぎ奪われたソマリアの漁師たちは、ダメだと分かっていても海賊にならざるを得なかったという背景があるのです。
21世紀型海賊たちは、金銀財宝を求めているわけでもなく、海賊王になりたいわけでもなく、ただ生きるために略奪行為を繰り返しています。国際社会に置き去りにされてしまった彼らの悲しい選択―――いつの日か彼らの国に「ONE・PEACE(たったひとつの平和)」が訪れますように・・・。(N)
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