せめて話の中ぐらいは景気よく、世界最大のダイヤにまつわるお話です。ご存知のようにダイヤモンドは、天然で存在する最も硬い物質です。4月の誕生石で、石言葉は「永遠の絆・純潔」。炭素からできていて元は鉛筆の芯と一緒ですが、本来は黒い塊である炭素の結晶が、地球内部の高温高圧によって分子の配列が変化し、あの綺麗なダイヤモンドの結晶になります。
世界最大のダイヤモンドは、1905年に南アフリカで発見された『カリナン』というダイヤ。カリナンはカット前の原石で3106カラット=621.2グラムもありました。それまで世界最大だったエクセルシオール(995.2カラット)と比べると、いかに型破りの大きさだったかが分かります。しかしこれは原石ですから、当然カットが必要になります。そのカットを担当したのが、当時 世界最高の研磨職人と言われたアンリ・コ―という人物(かの有名なアッシャーダイヤモンド社の職人でした)。ダイヤモンドは自然界で最も硬い物質ですが、ある一点を突けば容易に砕くことができます。絶対に失敗できない、歴史的大仕事を目の前にして、さすがのコ―さんもガチガチに。そして原石を割る一撃を入れた瞬間、彼は気絶してしまったという逸話が残っています。
その後も職人たちの血の滲むような苦労の末、カリナンはついに世界一のダイヤとなります。ちなみに作業を担当したコーさんはダイヤが完成してからストレスによる神経衰弱にかかり療養生活に入っています。さぞかし大変だったでしょう。失敗して、いやぁついうっカリ、ナンて許されないわけですから。
気になるカットの成果ですが、合計1063カラット=212.6グラム、9つの大きい石と96個の小さな石、計105個もの宝石が生まれました。は~、すごいですね~、1063カラット。一般庶民には想像もつきません。3106カラットの原石からこれだけの・・・ってちょっと!残りの2043カラットはいずこへ?ダイヤのカットとはそういう物なのか、当時の技術ではこれが限界だったのか、はたまた何物かの手によって持ち去られたのか、謎のままです。「ダイヤモンド」の語源は、ギリシア語の”adamas” (アダマス)に由来します。これは“屈しない”とか“征服できない”という意味。ダイヤモンドには、人間が計り知れない神秘の力が宿っているのでしょうか。(N)
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