ある喫茶店で、先日あった話です。
50代の女性客がカウンターでアイスコーヒーをもらい(セルフサービス)トレーに乗せて、テーブルまで運んだのですが、トレーをテーブルに置くときにコップがすべり全部こぼしてしまいました。「ああ、やっちまった・・・」―――たまに見る光景です。年に1回位でしょうか。店員が机・床を拭きます。無料でもう1杯アイスコーヒーも出してくれました。ところが、ところが・・・その女性客はまたしてもそれをこぼしてしまったのです!みんな、絶句。私はこういうのを見たのは、人生で初めてです。
『ハインリッヒの法則』というものがあります。1件の「重大災害」の陰には、29件の「かすり傷程度の軽災害」があり、その陰には、300件の「怪我等はないがヒヤリとした体験」がある、というもの。
『ヒヤリとした経験を活かさないと、そのうちさらに大きな災害に遭遇する。注意しなさい』、という教えです。
アメリカの損害保険会社の調査部にいたハーバート・ウイリアム・ハインリッヒが労働災害5,000件余を統計学的に調べて計算し、導き出されたのがこの数字。旧国鉄(現JR)にも影響を与え、「330運動」という運動が存在していたそうです。
さて、冒頭の話に照らし合わせますと、「2回連続でこぼす」という重大な事故の前に、「1回こぼす」というそれなりの事故があり、さらにその前、女性客もきっと人生の中で「危うく飲み物をこぼしかけた」というヒヤリとした経験があったはずなのです。それらはすべて連動していて、ヒヤリとした経験を活かして片手でコップを支えていれば、重大な事故はもちろん、それなりの事故も防げた、ということが言えます。逆に言えば重大な事故を防ぐための気づきを得るチャンスは300回ある、ということでもあります。
かくいうわたくしめも「今年からお小遣いを減らされる」という超重大事故を引き起こしたばかり。でもそれは、その陰にあったはずの嫁さんの態度や言動の中でヒヤリ・ハットに気付けなかった自分が悪いのです、涙。(N)
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