選挙が近づくと、街中を何台もの選挙カーが走り回るわけですが、外国人からするとその爆走が爆笑モノだといいます。やってることは名前を連呼している(外人でもそれは分かるらしい)だけ。「あれ意味あんの?」ってなもんです。確かに車に乗って名前を叫ぶだけというのは、考えてみればあまりにもチンケで前時代的であります。日本人にはその光景が当たり前になっているだけで、初めて見たら笑ってしまうのかもしれません。
法律的な観点から見ると、「名前の連呼」は効果があると思ってやっているわけではありません。逆に法律上、移動中は「名前の連呼」しかできないようになっています。名前の連呼以外、つまり自分の政策や思いを演説する行為は、停車した車の上で午前8時から午後8時までの間のみ認められています。当然ですが候補者は必死です。選挙カーでの宣伝や演説は、いわば自身の「就職活動」。ご存知の通り日本は選挙に立候補するために莫大な費用がかかります。落選=失業である立候補者にとっては、地味で時代遅れな活動であっても、それは全力を尽くす対象なのでしょう。ただ、今のようにお金はかかるわ恥ずかしいわの選挙活動を強要される仕組みでは、まともな神経と経済感覚を持った人間は参入しません。だから平気で嘘はつく、不倫はする、「このハゲー!」と叫ぶ、ような人達しかいなくなってしまうわけです。
話がズレてきました。選挙カーに「うるせぇぞ!」と苦情を言ったら、「すみません!気をつけます!」とスピーカーから大音量で謝罪する、「それがまたうるさいんじゃー!」というコントのような風景が毎回のように繰り広げられる日本の選挙戦。日本の風物詩として温かく見守るべきなのかもしれませんが、この技術大国・日本で、イメージの国・日本で、あの陳腐でチープな選挙カーの存在は明らかに浮いています。ネット選挙をもっと普及させ、若い世代の投票率を上げたいのなら、選挙カーやポスター、ビラやチラシといったアナクロニズムな産物から脱却する必要もあるのではないでしょうか。
ところで「国民一人ひとりが候補者の名前を用紙に書いて投票する」国は日本だけです。なぜなら他の国では識字率が低いため、候補者の名前を読み書きできない人が沢山いるからです。大概は政党や候補者の名前が予め記載された紙に○印をつけて投票したり、中には政党ごとのロゴマークを頼りに投票する国もあります。文化水準の高さとそれに見合わぬ封建的な選挙制度。2つが同居する日本の選挙を是非お楽しみください。(N)
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