右目にしている眼帯を外すと数秒先の未来を見ることができる―――しかしその能力を使うと多大な体力を消費してしまうため、普段は眼帯をしてその発動を防いでいる・・・私が好きだった漫画に登場するキャラクターの設定です。「ヴィジョンアイ」という名称のこの能力が何故かやたらカッコよく思えて、右目と左目で見える世界が違うというアンバランスさと、未来が見えてしまうことにより見たくないものまで見えてしまうという危うさが私の心を惹きつけました。
「モノビジョン」は物を見るときに右目と左目で役割が違う状態のことを言います。遠くは右目で見て、近くは左目で見る(逆もあり)という、ちょっと「ヴィジョンアイ」っぽいカッコよさがあります。そしてこれは漫画の中の話ではなく、現実に存在する能力です。仕組みはこうです。人間は左右の目の視力に大きな差が生じると、脳が自動的に遠くを視力が良いほうの目で見て、近くを視力が悪いほうの目で見ようと役割分担してくれます。もちろん左右の視力が揃っていたほうがバランスが良く違和感も少ないので、ものを立体的に見るのにも好都合なのですが、一般的な日常生活において左右のバランスはそこまで必要ではありません。ということは例えば3D映画を見るときのような特殊な状況を除けば、モノビジョンの人はメガネやコンタクトによる矯正を必要としないことになります。
人は年齢を重ねれば当然、老眼になっていきます。でも誰しもが老眼になっても遠くも近くも見えるほうがいいに決まってます。なので昔からわざと「モノビジョン」の状態にするというアイデアが試みられてきました。これは理論上、コンタクトレンズを使用すると可能になります。片目を正視、反対側を近視の状態にしておけば、遠くも近くも見えることになるからです。ちなみにメガネではダメです。メガネのレンズは凹凸によって見える大きさを変えるため、左右の度が違いすぎると人間の脳の処理能力を超えてしまうのです。しかし実際はコンタクトでもうまくいきません。左右の目を瞬間的に使い分けるためには脳がその状態に慣れて適応しなければならないのですが、それには非常に時間がかかるのです。四六時中コンタクトを着用していればいつかは脳が慣れるのでしょうが、それは体にとっても良くありません。無理やり度の違うコンタクトを長時間着用すれば、眼精疲労になったり頭痛を引き起こしたり、最悪は眼病になったりしてしまいます。
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